【ICT活用方法】体育・保健体育科の指導におけるICT活用の考え方【解説/小中高校/文部科学省】


【ICT活用方法】体育・保健体育科の指導におけるICT活用の考え方【解説/小中高校/文部科学省】 5 | ICT教育

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文部科学省が作成した「体育・保健体育科の指導におけるICTの効果的な活用」についてご紹介いたします。

体育・保健体育科の指導におけるICTの効果的な活用

https://www.mext.go.jp/content/20200911-mxt_jogai01-000009772_10.pdf

① 学習指導要領及び解説( ICT 活用) 

■中学校学習指導要領並びに保健体育編の ICT 活用に関する記載内容 

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学習指導要領では、 情報手段を積極的に活用して、 各分野の特質に応じた学習活動を行うよう工夫するとなっています。 

なお、留意することが大切である点として、 運動の実践では ICT を補助的手段として活用し、 活動そのものの低下を招かないようにする点です。 つまり ICT を使うことが目的になってしまうのではなく、 特質に応じた学習活動を行うことが求められます。 

② 体育科における ICT の効果的な活用例 (体育/保健)

体育事例1(知識の習得)

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跳び箱運動の単元の導入の場面です。 

単元で取り扱う技について、 大型スクリーンを使用し解説しています。

 指導者は児童生徒が技のイメージやポイントをつかむことができるよう、技ごとに順番に示しています。 

しかし、 技の習得状況は 全員が全く同じということはなく、 これまでの学習経験や体格などにも影響を受けます。 また技に対する興味や関心も個人によって異なってきます。 

「私は違う技の動画をもう少しじっくり見たいな」と思うことも十分考えられます。 つまり、一斉に視聴する方法では、技の行い方についてその時間内に理解することが求められました。

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ところが、一人一台の ICT を効果的に活用することで、 技ごとの動画を「個」のニーズに応じて視聴することが可能になります。

 先ほどの跳び箱運動を例に考えると、 開脚跳びに挑戦したい児童生徒、かかえ込み跳びに挑戦したい児童生徒と、個に応じた学びが可能になります。 

著:鈴木 直樹, 編集:鈴木 直樹
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体育事例2(技能の習得①)

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自分たちの動きを一台のタブレットで確認しています。

 生徒は、短い時間の中で順番に動きを再生しています。 しかし、生徒によっては「自分の動きを確認したいな」と思うことも考えられます。 グループに一台では、自分の動きをじっくりと見ることには限界がありました。 

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ところが一人一台になると、先ほどの柔道を例に考えると自分が確認したい場面を繰り返したり、スローにしたりして自分の確認したい方法で視聴することが出来ます。

つまり、一人一台の ICT を効果的に活用することで自分の動きを即座に確認することができます。さらに、授業で学習した動きのポイントと自分の動きを比較することで、 できている点や修正点を確認することもできます。

体育事例3(技能の習得②)

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休み時間に児童が逆上がりに挑戦しています。 体育の学習の時間には逆上がりが成功したのですが、 少し間があいたのか休み時間に挑戦するとうまく回ることができません。

児童の中には「前の動きを確認したいな」と思うことも考えられます。しかし、体育の学習の時間にできた時の動きを確認したくとも、 過去の自分の動きを確認することは少なかったのが現状です。 

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ところが、 一人一台の ICT を効果的に活用することで、 毎時間の動きを撮影することが可能になります。 

毎時間の動きを撮影することで、過去の自分の動きを見るとともに動きを比較することで、自己の変容を確認することもできます。 

体育事例4(思考力、判断力、表現力等の育成)

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球技のゴール型で ゲームの映像を全員で視聴しながら、 次のゲームに向けて作成を考ている場面です。 

 映像があることで、視覚的にゲームを振り返ることができるのですが、 詳しく見たい場面は生徒によって異なってきます。 例えば主に攻撃に参加していた生徒と、 守備を中心に行なっていた生徒では振り返りたい場面は当然異なってきます。

生徒によっては、 「あっ!そこ、 スローで見たいんだけど」と思ってもチームの時間にも限りがあり、十分に思考・判断することなく次のゲームに臨まざるを得ないことも考えられました。

つまり、これまでは限られた時間の中でチーム全員で同じ画面で、同じ動きを確認していたので、時として次のゲームに向けての作戦を各自が十分練られないままチームの時間が終わっていたことも考えられました。 

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ところが、 一人一台の ICT を効果的に活用することで、まずは各自が自分の視点でゲームの撮影動画を見返すことができます。 

その後、一人一人が次のゲームに向けての作成作戦について、思考・判断したことをチームの時間で交流します。 つまり、自分の考えを深めて対話をすることが可能となるのです。 

体育事例5(学びに向かう力、人間性等の涵養)

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これまでは走り高跳びの記録や50 M 走のタイムはその単元の中で学習カードに手書きで児童生徒が記入していました 。

単元の導入である生徒が、「新記録を出したいな。 ところで、去年の記録は何 CM だったかな」と思っても、 去年の学習カードが手元に残っていないと、 記憶を頼りにするしかありませんでした。

つまり、過去の自分の記録をその場で確認することはあまりありませんでした。 

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ところが一人一台の ICT を効果的に活用することで、過去の自分の記録や 全国の同じ学年の平均値をその場で瞬時に検索することが可能です。 

記録を比較することで、 自分の伸びを実感したり 新たな目標を設定したりすることができます。 つまり、運動への意欲をさらに高めるきっかけとなるのです。 

編集:鈴木直樹, 編集:鈴木一成
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保健事例6(知識及び技能の習得)

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中学校における「傷害の防止」の学習です。

応急手当としての心肺蘇生法を生徒が実習として行う際に、「手順をもう一度、確認したいな」と途中で思ったり、修正点が明確にならないまま終わってしまったりということも時としてありました。

 これらは、一斉指導や一斉での動画視聴などにより、応急手当の手順を十分に確認することができないまま実習を行ったことが要因の一つとして考えられました。 

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ところが、一人一台の ICT を効果的に活用することで、 見たい時に見たい手順を 動画で再確認したり、 撮影した自分の取組動画を視聴したりすることが可能となります。

そして、試行錯誤しながらも修正点を意識し、 再度実施することにより、 一層知識の理解が深まり、技能の向上を図ることが期待できます。 

保健事例7(思考力、判断力、表現力等の育成)

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小学校における「けがの防止」の学習です。

けがの防止に向けて、校内の危険箇所を示したマップをもとに話し合うのですが、児童が実際に危険箇所を確かめていないと、「実際に確かめていないので、これだけでは解決方法が思い浮かばないな」といった反応も聞かれました。

つまり、教師が事前に用意した危険箇所の写真を基にクラス全員やグループで課題発見や課題解決の方策を話し合っても 具体的な解決策がなかなか思いつかないなどの課題も見られました。 

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ところが、一人一台の ICT を効果的に活用することで、児童が各自の視点で危険だと思う箇所に実際に撮影をすることができます。

 そして、その後のグループでの話し合いも 撮影した画像や動画を基にするので、 お互いがイメージを持ちやすく かつ交流も各自が対策を立案した上での交流となり 思考を深めることができるのです。

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③ 1人1台による学習等の効果 

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複数に一台ではここまでのご説明のように、個に応じたきめ細やかな対応には時間的・内容的な面で制約も見られました。

ところが一人一台になると、 繰り返し視聴することによる、 個に応じた学びが可能になったり自己の動きを即座に確認したり、自己の変容に気付いたりすることによる意欲の高まりが見られたり、 個々の記録等の学習内容と その効果の積み重ねの確認ができることによる、意欲的・積極的な態度の涵養が図られたり、授業以外の場での活用による、学びの広がりが期待されたりします。 

次に一人一台による ICT の効果について、別の視点で考えてみたいと思います。 

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体育科の授業で 学習カードを使用することがあります。 

学習カードは、これまで多くは児童生徒が手書きで記録をつけていました。ころが、一人一台の ICT を効果的に活用することで、手書きではなくデータを活用することも考えられます。例えば、運動の記録や学習の感想などを 児童生徒が各自の PC にデータで入力し、 教師がその入力されたデータを収集、分析するなどです。 

記録がデータ化されることで、 これまでは学習カード一枚ずつ確認していた時間が大幅に短縮され、その結果、教師はつまずきに応じた指導・支援の準備に時間をかけることができるのです 。

つまり、一人一台の ICT 活用は、教師の授業改善にも資すると考えられます。 

まとめ

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学習指導要領解説に従前の学習指導要領の成果と課題が記されています。 

その中で課題については以下の3点が挙げられています。

  • 運動する子供とそうでない子供の二極化傾向
  • 運動時間の減少に伴う体力の低下
  • 健康課題を発見し、主体的に課題解決に取り組む学習が不十分

これらの課題を解決する上で、一人一台の ICT を効果的に活用することで、 運動の行い方を理解したり、練習方法の工夫改善を行ったり、友達との学び合いの充実を図ったり、 自己の課題の発見把握がより容易にできたり、 自己の成長を実感することができたり、授業外での運動の促進を図りたりすることが可能になると考えます。 

その結果、 苦手だった運動ができるようになり、 運動が好きになる。 運動することへの意欲が高まり、積極的に運動するようになる。 自己の健康課題に主体的に取り組むようになる。 といった児童生徒の姿につなげていくことができるのではないでしょうか。 

端的に一言で申するならば、 一人一台の ICT を効果的に活用した体育科の授業を行うのは、 児童生徒が生涯にわたって心身の健康を保持増進し、 豊かなスポーツライフを実現するための資質能力を育成するためにあるということです。 そしてその可能性は今後さらに広がってことが考えられます。 

是非、各学校現場で、一人一台の ICT を効果的に活用しながら、 児童生徒の心身の健康の保持増進 豊かなスポーツライフの実現に資する資質能力の育成に努めましょう。