【ICT活用方法】社会の指導におけるICT活用の考え方【解説/地理歴史公民/小中高校/文部科学省】


【ICT活用方法】社会の指導におけるICT活用の考え方【解説/地理歴史公民/小中高校/文部科学省】 5 | ICT教育

【PR】当サイトのコンテンツはプロモーションが含まれる場合があります。

文部科学省が作成した「社会の指導におけるICTの効果的な活用」についてご紹介いたします。

社会科,地理歴史科,公民科の指導におけるICTの活用について

https://www.mext.go.jp/content/20200911-mxt_jogai01-000009772_02.pdf

社会科の指導において ICT を活用する際のポイント

小学校・中学校の社会科、高等学校地理歴史科・公民科においてICT の活用は、各教科等の特質に応じ、それらを適切に活用した学習活動の充実を図ることが求められています。

 1.学び方や調べ方を大切にし、児童生徒の主体的な学習を一層重視すること

 2.「社会的事象等について調べまとめる技能」※小中高の「解説」に記載

学び方調べ方を大切にし児童生徒の主体的な学習を重視すること

資料は探究的な学びの過程を、模式的に表したものです。

このように、児童・生徒一人一人が、自ら問題意識・課題意識を持ち、問題解決・課題解決との見通しを立て、必要な情報を収集したり、収集した情報を読み取ったり、読み取った情報を分類整理してまとめたりする学習活動を構成することが大切になります。

このような学習活動を実現していくためには、児童生徒が学習問題・学習課題について調べて考え・表現して発信できるように、いつどの場面でどのように ICT を活用するのか教師が学習場面を想定して単元を通して授業をデザインしてことが必要となります。

社会的事業等について調べまとめる技能

今回、小・中の社会科や、高等学校地理歴史科・公民科の学習指導要領「解説」に、「社会的事象等について調べまとめる技能」と題する参考資料が共通に加わりました。

これらは繰り返し活用し、その習熟を図るように指導することで定着するものです。

また学習指導要領には、「コンピューターや情報通信ネットワークなどを活用して、目的に応じて様々な情報を集める」や「情報機器を用いて、デジタル化した情報を統合したり編集したりしてまとめる」「数値情報をグラフに転換する」「表などの数値で示された情報を地図等に変換する」といった ICT の活用に関わる記載が示されています。

これらの技能について発達段階や、児童生徒の実態などに留意しつつ、計画的に指導するよ授業をデザインしていくことが大切です。

社会科、地理歴史科、公民科における ICT の活用例

小学校の例

第3学年「身近な地域や市の様子」の学習などで見学・調査を行う際、これまでは「ノートに記録する」「写真を撮る」などが多かった活動に 、ICT 活用により広がりを持たせることができます。

例えば、グループごとにタブレットを持参し、それぞれの問いに合わせて見学を進めます。

すると子供達は「写真機能を使って記録する」「録画機能を使って映像を記録する」「映像の中に自分たちの解説をやる」「レポーターをつけてレポート形式の動画を撮る」など、様々な活用が出てくることが考えられます。

また、ノートへの記録に追われることなく、写真を撮ったりインタビューをしたりするなど、情報の収集に専念することができます。

ICT を活用することで「早く効果的に情報収集できる」「見えにくい情報を見れるようにできる」など、学習活動の幅が広がります。

見学・調査後、撮影してきた映像をグループごとに見ながら、問いに対する答えや新たな発見をまとめていきます。

繰り返し再生できるので、大切な内容を何度も確認することができます。

情報を繰り返し映像で再生し確認したり話し合ったりできるので、情報が吟味され調べたことを基に深く考えることにつながります。

また、自分たちで収集した画像や映像を基に、分かったことをまとめたり、分かりやすく伝えたりすることもできます。

ICT を活用することで、「繰り返し再生できる」「映像や音声で 分かりやすく伝えることができる」「情報交換がやりやすく、考えを広めたり深めたりできる」など学習活動の幅が広がります。

最後に 「ICT を活用して一つにまとめ、特色を考える」場面について説明いたします。例えば、第3学年「身近な地域や市の様子」の学習で、各自が土地利用・交通・公共施設など問いごとに作った地図をタブレット上で一つずつ重ねて一枚にすることができます。

出来上がった「市の地図」を基に、「市の様子」について話し合う活動では、地図が重なっているので、例えば、「市の地形」と「土地利用」の様子を関連付けたり、「土地利用」と「交通」を関連付けたりして「市の様子」を考えるなど、児童は事実と事実を関連付けて「市の様子」を語っていくことができます。

ICT を活用することで、すぐに組み合わせることができたり、組み合わせを変えることができたりするなど、「事実と事実を関連づけて考えることができる」ので子供が関連付けて特色を考え、説明することにつながるなど、学習活動の幅が広がります。

中学校の例

地理的技能の一つとして、同一地域の異なる情報を比較・関連付けて読み取る技能があります。

こうした技能を身につけるうえで、複数の地図の重ね合わせが容易に行える ICT の活用は非常に有効です。

ここでは、身近な地域の防災に関する学習で、浸水想定区域、自宅や学校の位置の地図などを重ね合わせ、それぞれの情報を関連付けて、グループで話し合う活動が考えられます。

基盤となる地図に、浸水想定区域などのレイヤーを重ね合わせて読み取ることなどは、国土交通省のハザードマップポータルサイトにある重ねるハザードマップで容易に体験することができます。

https://disaportal.gsi.go.jp/maps/?ll=35.353216,138.735352&z=5&base=pale&vs=c1j0l0u0t0h0z0

この資料は、新聞に掲載された個別の地図をパソコン上で重ね合わせてみることで、液状化の要因について考察させるものです。

明治18年測量の地図と、液状化が発生した地点の分布図を重ね合わせることで、地形と地震災害との関連に気付かせ、地形についての関心を高めることが期待できます。

こちらは、「自分たちの住む地域に津波が来たら、どうすればよいだろう」という課題について追求する過程で作成されたものです。

古地図やハザードマップ、航空写真、標高メッシュデータなどを重ね合わせたりして、地域の津波安心・安全マップを作ります。

こうした活動を通して、意見交換をしながら、防災意識を高め、地域のあり方についての考えを深めていくことが期待できます。

この問題は、図から「社会的条件」と「自然的条件」を読み取り、工業立地に関する知識と結びつけて、電気機械工場などの工業団地を作る場所として適切な場所を考える問題です。

異なる地図から情報読み取り、それぞれの情報を関連付けて場所の特徴を捉えることは、地理の学習を通して身につけたい力の一つです。こうした力はこれまで見てきたような地図を重ね合わせて考察する活動の積み重ねによって身に付けられると考えます。

中学校と高等学校の地理の学習

読み手にとってわかりやすい地図を作ることは、地理的技能の中でも特に大切な機能の一つです。 ICT を活用することで、主題図の作成をより容易に行うことができます。

「授業例A」左側の「図1」は、国別の老年人口という絶対的な数値を示していますが、この地図では、中国やインドで特に高齢化が進んでるような、誤った印象を与えることになります。

一方、右側の「図2」は国別の老年人口率という相対的な数値を示していますが、高齢化に関する地域の特色が、はっきりと分かります。

「授業例 B」 右側の「図4」は、設定した階級幅の関係で格差が捉えにくく、不適切と言えるかもしれません。ただし、富の偏りを強調する資料として考えるのであれば、適切とも言えます。

どういった統計データを使えば、より効果的な主題図ができるのか?データにあった適切な地図の表現方法は何か?階級の幅をどのようにすれば、伝えたい情報が伝わるのかなど、体験を基に方法を理解し、適切に地図化する力を高めることができます。

次に、加工データの合成です。

例えば、コンビニエンスストアの立地には、どのような条件が必要かという問いを立てて、学習を通して身につけた都市・村落や商業に関する知識を踏まえつつ、自分の生活圏を調査し、問題解決に向け追求する活動が考えられます。

生活圏の調査や、国土像の探求などの場面では、「内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局及び経済産業省の(地域経済分析システム:RESAS)」や総務省統計局の「政府統計の総合窓口(e-Stat)」 の地理情報など、様々なデータを基に地域活性化のための有効な取り組みについて協議するなどの活動が考えられます。

こちらは、国土交通省の地理院地図の基本的な機能を体験させるものです。

3 D 地図を表示して、学校周辺の自然環境を概観したり、駅と学校の間の距離を計測したり、断面図を作成したりする活動を比較的早い時期に行うことで、その後の学習に活かすとともに、防災意識を高めるなどの効果が期待できます。

これは「生活圏の地理的な課題をどのように把握すればよいのだろうか?」という問いを立て、グループごとに様々な Web サイトにアクセスして、比較検討し、共有する活動です。

生活圏の調査での資料収集の見通しを持たせると共に、 GIS の有用性の実感につながると考えます。

中学校と高等学校でのICT活用

歴史の学習では、さまざまな資料を活用し、事象の変化の様子を読み取り、その変化の背景などについて考察したり、既習の事象と関連させながら、事象の意味や意義を考察したりすることが求められます。

そのような学習の場面に ICT を効果的に活用することが考えられます。

「高等学校新学習指導要領」の歴史領域科目では、諸資料を活用し、歴史の学び方を習得することが求められています。さらに「日本史探求」では多様な歴史資料そのものが、現代および未来についての多くの示唆にあふれた国民共有の財産であることに言及し、保存・継承の大切さについて学ぶことも示されています。

それらの学習について、従来、学習指導要領では、図書館・博物館・資料館などの活用が示されておりますが、近年、これらの施設で資料のデジタル化が進められるとともに、多様な歴史資料が公開され、インターネットを利用したアクセスが可能になりました。

この図は、国立公文書館デジタルアーカイブにある、大日本帝国憲法「御署名原本」を活用した学習事例です。

生徒が、大日本帝国憲法の原文を直接読み取り、相互に検討することで、その内容や趣旨について具体性をもって理解することができます。また、将来にわたって学び続ける機会や方法についての認識や姿勢を育み、生涯学習へと発展させていくことも期待できます。

この図は、歴史と現代社会の関わりを考える学習の事例です。データベースを活用し取り上げる現代の課題と類似の歴史の事象などを検索・収集し、歴史的経緯を踏まえて現代の社会問題について考察を深めていく事例です。

何の事例も、 ICT を活用することで、生徒がより主体的に資料を活用し、理解や探求を深めることの大切さを示しています。

編集:歴史教育者協議会
¥3,300 (2023/02/13 15:17時点 | Amazon調べ)

中学校公民的分野・高等学校公民科の事例

メディアの多様化、ビックデータや人工知能を活用した情報発信など情報技術の加速度的な進展により、必要に応じてコンピューター等の情報手段を適切に用いて情報を得たり、情報整理比較したりするなどの情報活用能力が、主権者として的確な判断を行うために、一層求められるようになっています。

「中学校公民的分野」及び「高等学校公民科」では、現実社会の諸事象等を主体的に追求する学習過程において、1人1人の生徒が、課題解決のために必要な情報を収集するなどの経験を通して情報活用能力を身につけていくことが、極めて重要であると考えております。

例えば、一人一台の情報端末を用いることにより、データの裏付けを取ったり、異なる立場の意見を調べたりすることが、必要なときにいつでも可能となります。

また、教師の指導と評価を得ながら情報の収集を繰り返すことによって、課題解決に資する、信頼性の高い情報を収集する技能の習熟が大いに期待できます。

より良い社会の形成に向けて、社会参画の意識を涵養することも、公民的分野や公民科では大変期待されているところです。

例えば、自分たちが暮らす自治体の首長模擬選挙における公約を作るという学習において、「Web アンケート制作ツール」などを用いれば、自分たちが構想した公約を保護者や地域の方に評価してもらったり、意見をもらったりすることができます。

こうした取り組みにより、妥当性、効果、実現可能性などの視点から自らの構想について検証する際に有益な情報を入手することができますし、自分たちの構想した公約に高い評価が得られれば、生徒にとって大きな自信につながり、社会へ積極的に関わろうとする意識を涵養できると考えます。

また、 SNS を効果的に活用して社会参画の意識を涵養することも考えられます。

例えば、函館西高校の事例では、生徒が SNS を活用して地域活性化のアイデアを発信し、その 反応分析する学習を行っています。なお、その際、必要となるのが情報の発信者としての情報モラルです。

生徒は SNS を日常的に活用していますが、自らが発信する情報の影響力については無自覚であることが多いのも現実です。

そこで、高等学校では情報化と連携するとともに、このような取り組みを通して、情報の与える影響力を理解するなど、情報モラルについても実践を通して学習することが可能となります。

以上で、社会科地理歴史科公民科の指導における ICT の活用についての説明を終わります。

https://penginedu.com/2022-07-27-174244/