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【小中高校】技術・家庭(家庭科)の指導におけるICT活用_7

小学校家庭科中学校家庭分野における ICT 活用について、基本的な考え方と ICTの活用例について紹介します。

小学校家庭科と中学校家庭分野の指導における ICT の活用

なぜ ICT を活用するのか?ということについて基本的な考え方を確認します。

こちらは小学校家庭科の目標です。小学校家庭科では、「生活の営みにかかる見方・考え方を働かせ、衣食住などに関する実践的・体験的な活動を通して、生活をより良くしようと工夫する資質・能力を次のとおり育成することを目指す」と示してあるように、「生活をより良くしようと工夫する資質・能力」の育成を目指しています。

家庭科の特質として、家族や家庭、衣食住、消費生活や環境といった生活事象を学習対象としており、製作・調理などの実習や観察、調査・実験などの「実践的・体験的な活動」を通して、基礎的・基本的な知識や技能を身につけたり、学習の進め方として計画、実践、評価、改善などの一連の学習過程、すなわち「問題解決的な学習」を通して課題を解決する力などの資質・能力を育成していきます。

今まで各学校においては、先生方がこの一連の学習過程の中での様々な場面で、様々な指導方法を工夫しながら、家庭科や家庭分野の資質・能力の育成に努めてくださったことと思います。これまでの工夫を生かしつつ、これからは家庭科の特質や「ICT」 を活用する利点などを踏まえ活用することで、教師の指導の充実や子どもの学習活動の充実を図り、家庭科・家庭分野の資質・能力の育成へと繋げていくことが必要です。

また、家庭科における調理や製作などの実習や観察など実践的・体験的な活動を行う時安全かつ効果的に学習を進める上でも、「ICT」は有効に活用できると考えています。

中学校でも同様です。学習指導要領では、学習の基盤となる資質・能力の一つとして「情報活用能力」をあげています。「情報活用能力」を育成するためには、各学校において、日常的に情報技術を活用できる環境を整え、すべての教科等においてそれぞれの特質に応じ、情報技術を適切に活用した学習活動の充実を図ることが必要です。

よって家庭科・家庭分野においても、ICT を活用した学習活動を充実することで、「情報活用能力」の育成を目指すことが大切だということです。

家庭科・家庭分野では、「問題解決的な学習過程」を想定し、指導や学習活動を工夫しながら、資質・能力を育むことができるようにしています。これらの学習過程の中で、「ICT」だからこそできることを、必要な場面で行うようにすることが大切です。

この学習過程において、「ICT」を活用することで、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の実現もより図られていくものと考えます。ただし、「 ICT」 ではなく、実際に体験させることで効果的な授業が展開できる場面もありますので、やみくもに使用するのではなく、使用する場面を適切に見極めることが重要であることを確認しておきたいと思います。以上が、 ICT 活用についての基本的な考え方です。

学習過程に沿った ICT の活用例

「生活を見つめ、生活の中から問題を見出し、解決すべき課題を設定する場面での ICT の活用」

題材の導入で「 ICT」 を活用し、生活場面の動画を用いることにより、生活を具体的にイメージできたり、生活の場面の前後の動画を撮影しておいて示したりすることで、前後の差や変化が確認でき、そこから「何が問題なのか」を見つけたり、「なぜそうするのか」について考えたりすることができます。

そして、そこから「どうして~なのか調べてみたい。考えてみたい」という課題意識が生まれることが考えられます。児童生徒一人一人の知的好奇心が喚起され、自己実現の欲求が高まり、意欲的に取り組もうとする姿が生まれることが期待されます。

小学校家庭科

例えば小学校家庭科では、買い物の失敗経験を交流し合い、そこから問題を見出して課題を設定する場面で活用している学校があります。また今までは、写真資料や大画面での整理・整頓の前後の写真を2画面で投影したり、埃が舞い上がる様子を見せたりすることにより、整理・整頓や清掃の必要性を実感する工夫をされていたと思います。

しかし、タブレット型の学習者用コンピューターを家に持ち帰って、児童自身が自分の部屋の机の上の様子を撮影しておき、数日後の様子と比較したり、学校のある場所の整理・整頓や掃除の前後を撮影しておき、数日後との比較をしたりすることで、そこから問題を見出し、課題設定と繋ぐことができるのではないかと考えます。

中学校家庭分野

中学校では、例えば「身近な幼児」と「幼児に関わる人々」の様子や「幼稚園」や「保育所・認定こども園」などでの幼児の様子の映像を、タブレット型の学習者用コンピューターで見ることにより、幼児の発達と生活の特徴、幼児にとっての遊びの意義や幼児への関わり方への関心を持ち、課題の設定とつなげることができると考えます。

さらに、タブレット型の学習者用コンピューターを家に持ち帰り、それぞれの地域の活動の映像を撮ってきて、高齢者など地域の人々との関わりについて問題を見出し、課題を設定することにつなげることもできると考えます。ただし、家庭などでの様子を撮影させる場合はくれぐれもプライバシーに配慮する必要があります。

生活に関わる知識及び技能を習得し解決方法を検討する場面や解決の見通しを持ち計画を立てる場面での ICT の活用

「家庭科」は実践的・体験的な活動を通して、学習内容の基礎的・基本的な知識・技能の習得を図ります。実践的、体験的な活動である調理や制作など、作業行程を説明する際、先生方は資料や教科書を用いてその行程を説明したり、自分の周りに子供達を呼び寄せ、示範しながら丁寧に説明したりしていました。

 「ICT」を活用することにより、効果的・効率的に指導し、生徒達の基礎的・基本的な知識及び技能の習得に繋げていくことができると考えます。例えば、調理や製作での教師の示範をイメージしてみましょう。生徒達が一番真剣に見て聞いているのは、先生の「細かな手の動き」や「作業の順序」などです。それらのポイントを、「 ICT」の拡大・動画などの機能を活用することにより詳しく理解することができると考えます。

例えば、小学校では「玉止め、玉結びの仕方」「なみ縫いなのの手縫いの仕方」「アイロンの使い方」「ミシンの使い方」「包丁の扱い方」や「材料の切り方」、中学校では「まつり縫いの仕方」「スナップ付け」などの補修がありますが、その際、タブレット型の「学習者用コンピュータ」や「書画カメラ」などを用いて、手の動かし方、作業の順序など必要な場面で何度も繰り返して再生し、確認し理解することができると考えます。

また、中学校の製作では、小学校で学んだはずの「玉止め」「玉結び」「ミシンのうわ糸や下糸のかけ方」から教えなければならないような場面を目にすることがあります。

今までは時間をかけて、先生が再び教えていたところを、ICT を活用することで、より進度の差に対応した効果的・効率的な個に応じた指導ができるものと考えます。

また例えば、つまずいてうまくいかない時、子供が自分の技能を仲間に撮影してもらい、教師の示範と比べて、どこが違うのかを考え、何度も確認しながら知識や技能の習得を図ることもできると考えます。子供たちが何度も繰り返して再生出来る事で、よく授業中に見かける「先生!先生!」という支援を求める声も少なくなり、主体的に自分で解決していこうとする姿が増えていくのではないかと考えます。

家庭で練習させたい時には、タブレット型の学習者用コンピューターを家に持ち帰らせて、その結果を見届けることもできます。逆に、もっと進みたいと願っている子供の思いにも対応できます。さらに、実験・実習で活用することにより、実感を伴った理解を深めることができると考えます。例えば「衣服の快適な着方」や「季節の変化に合わせた住まい方」ではタブレット型の学習者用コンピューターに、「サーモカメラ」を接続して撮影することで暑い・暖かい・寒い・涼しいという体感的なものを可視化し、比較実験などを通して科学的に理解することができます。

解決の見通しを持ち計画を立てる場面での ICT活用

調理や製作、献立作成など、一人一人が課題に取り組む際にも、一人一人の技能の程度やニーズに対応することができると考えられます。例えば小学校では、「作りたい袋」を考え、過去の作品や事例集からデザイン等の制作に関する情報収集し、製作に生かすことができると考えます。

ある学校では、調理で用いる材料を取り上げる際、野菜の選び方・買い方について実物を準備することが難しいため、生鮮食品の野菜を選ぶ際の観点となる、「鮮度」の情報収集ができるようにしていました。中学校では、布を用いた製作において、衣服などの再利用をする場合など、布を無駄なく使う方法や作り方などについてインターネットで情報収集して製作計画を立てたりできます。献立作成においては、様々な食品や料理から一日分の献立を考えその栄養バランスを検討したりすることも考えられます。 

生活に関わる知識及び技能を活用して、調理・製作等の実習や調査・交流活動などを行う場面での ICT活用

授業では、一人一人が考え工夫したことや、一人一人の技能を写真や動画で撮影・保存し、それらを共有することにより学び合い・自分の考えを広め・深めていく場があります。

例えば、ある小学校では、献立作成の主食・主菜・副菜・汁物の料理の組み合わせについて、各自の考えを保存し、クラス全体で共有して考えあっていました。

中学校でも、献立作成ソフトを活用して1日分の献立の栄養バランスを検討したものを保存し、全体で話し合うこともしていました。また、調理実習の場面では、ペアで「切り方」「炒め方」を撮影し合うことで、実際には見ることができない自分の様子を見て、技能の習得状況を確認し、自己評価し改善に生かすことができると考えます。

さらに中学校では、布を用いた製作において、衣服等の再利用する場合など、布の原型を撮影しておき、どの部分を再利用したのか、本当に環境に配慮した再利用の仕方だったのかを説明したり、製作過程を説明したりできると考えます。

ICT を活用することにより、児童生徒が実践した結果を後日改めて評価・改善へとつなげていくことができると考えます。例えば、中学校での幼児とのふれあい体験です。各学校で保育実習が行われると思いますが、移動の時間や触れ合いの時間などを考えると時間的に振り返りまでできないことが多々あります。また、中学校は週1回もしくは2週間に1回の授業なので、実習の時の思いや様子を子どもたちに思い出させるのはなかなか難しいものがあったと思います。

しかし、保育実習での幼児とのふれあい場面の動画を撮影し、記録に残しておくことで、次の時間にその映像をもとに、自分の幼児への関わり方を振り返ることができるとともに、さらによりよい関わり方についても考えることができると考えます。また、幼児とのふれあいが2回できる学校などもあるでしょう。その場合、観察記録を残しておくことで、関わりの変化を自己評価し、次への改善策へと繋げることもできると考えます。

家庭や地域での実践活動を振り返り、評価改善する場面での ICT活用

小学校も中学校も「生活の課題と実践」の題材が位置付いていると思います。家庭や地域で実践する場面においては、家庭や地域での実践計画をグループで発表しあったり、実践発表したりする際、家庭や地域での実践の様子を写真や動画で写し記録しておくことで、具体的に発表出来ると共に、互いの工夫点を学び合うことが考えられます。

また、実践した結果を表やグラフ・写真や動画などを用いてまとめ、考察したことを根拠や理由を明確にして説明したり、発表したりすることができます。

以上のように、 ICT を活用することにより、様々な事が可能になり、家庭科・家庭分野の目指す資質・能力の育成につながっていくと考えます。

小中学校ICT活用のまとめ

「ICT」は様々な場面で活用が考えられ、実践が進んでいます。使用できる機器について、条件を踏まえた上で、どのような場面で「 ICT 」を活用できるのかを検討し、家庭科・家庭分野の目指す「資質能力の育成」につなげるために取り組む必要があります。

高等学校家庭科の指導における ICT 活用

高等学校の家庭科の学習の特質を踏まえた「 ICT の活用」について事例を中心にご紹介いたします。

これまでと同様、新学習指導要領においても実践的・体験的な学習活動を重視しています。実践的体験的な学習活動を通して得られる学びは、知識と技能の定着はもとより、それぞれの生活で活かしていくための実践力を養う上で大変重要な機会といえます。

また、先生方にとっても、生徒の新たな一面を発見できる場となっているのではないでしょうか。しかしながら、いざ実習や実験をするとなると、その準備から後片付けまでに時間を割かれたり、授業中は、先生が一人でクラス全体の指導をしなければならないことから、不安や多忙感を感じたりするなど、様々な課題があるということもお聞きします。特に、授業中は、多くの先生方が一人でクラス全体への説明・示範・机間巡視・個別の支援など、様々な指導をしつつ、事故防止の徹底も図っていかなければなりません。

こうした課題や不安を、 ICT を活用することによって解消し、先生方の業務の効率化を図るとともに、家庭科の特質を踏まえた一層の学習の効果を上げている事例を次に紹介します。

高等学校のICT活用例:被服実習

右上に赤い丸で囲んだ「3画面」を教室内に用意し、通常、このような形で授業を行っているのが特徴です。一般的な家庭科室は、中央にホワイトボードや黒板があると思いますが、そこに「パソコン」「スクリーン」「プロジェクター」「セットトップボックス」「無線 LAN システム」「タブレット端末」を配置しています。

赤い丸の部分をご覧ください、メイン画面は中央のホワイトボードです。そこに新たにサブ画面を二つ用意しました。一つは右側の液晶ディスプレイ、もう一つは左側のスクリーンです。メイン画面であるホワイトボードには、プレゼンテーションソフトで作成した授業資料をプロジェクターで投影します。こうすることにより、通常行っていた板書時間を削減することができます。その削減した時間を、生徒の観察や机間巡視、個別支援などの時間に充てることが可能となります。

次に、右側の液晶ディスプレイは、教師用タブレット端末と無線で繋ぎ、事前に取り込んでおいた画像や動画をミラーリング機能を用いて表示したり、タイマーやストップウォッチを表示したり、カメラ機能を用いて資料を拡大して表示したりすることで効率的に時間を使うことができます。サブ画面のスクリーンには、 Webで検索した資料を表示するなど、時間の都合上、授業で実施できなかった実験の過程や結果の確認をするなど体験の補完を行うことができるという事例です。ここでは、被服実習を例として挙げておりますが、他の内容の授業でも同様に展開することが可能です。

高等学校のICT活用例:調理実習

調理実習をする際には、一般的には一つのテーブルに生徒を集めて、先生が示範をするというケースが多いと思います。そうすると、後ろの生徒は示範してる先生の手元が見えない、自分の台に戻ると見たことを忘れてしまう。見ているだけの時間がもったいない、などの課題が出てきます。先生方の中には、実際に指導していて同じような経験をされた方もいるのではないでしょうか。

こうした課題を解消するために、事前に撮影済みの画像や動画を繰り返し連続で表示します。このことにより、先生は同じことを何度も複数の生徒に説明する時間を削減することができます。また、生徒は自分の作業のつまずきに合わせて、画像や動画でその部分を確認することができるので、技能の確実な定着につながるといえます。こうして生み出された時間を使って、先生は生徒の技能の指導だけではなく、なぜそうするのかといった科学的な根拠を説明しながら、机間指導をする事が可能となり技能はもとより知識の定着につながります。

また、実習中の生徒の役割の交代を指示したり、作業が遅い班に手伝いに入ったり、各実習代台で示範をしたりする事が可能となり、授業の進行が止まることはありません。失敗の未然防止にもつながると言えます。

スマートフォンやタブレット端末を活用した事例

「社会への扉」を活用した授業の導入時の事例

スマートフォンやタブレット端末を活用して、クイズに答えてる場面です。授業の進め方は様々あると思いますが、通常だと生徒に手を挙げさせて該当する人数を数える場面が想定されます。しかし、スマートフォンやタブレット端末を活用することで「クイズを読み上げたり」「人数を数えたりする手間や時間」が省けるので、時間の削減に繋がります。何より生徒は、自分の理解度、クラスの理解度を瞬時に把握することが可能となるので、学習意欲の喚起につながるといえます。

学習の定着を図る教材例

生徒が授業外の時間に、これまでの学習が定着しているかを確認できるよう、先生が定期的に自立度チェックを作成し、実施している様子です。授業が終わったら、その学習は終わりということではなく、生活に活かしてこそ、家庭科の魅力と威力を発揮できるのです。

家庭における実践力を高めるための工夫

生徒が家庭で実践している様子です。学校で学んだ知識や技能を生徒が実際に家庭でどのように活かし、実践しているのかがよく分かります。

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