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【小中高校】生活科・総合的な学習の指導におけるICT活用_12

生活科の指導における ICT 活用

 ICTを「適切に活用する」という事は、「ICT 機器の特質を踏まえること」、「低学年児童の特性、生活科の特質に応じること」と捉えることができます。生活科においては「低学年児童の発達の段階や特性を十分配慮して振り返りや表現に活用して活動への意欲を高めるなど、計画的に情報機器を取り入れることが重要」であると考えられます。

ここでの「振り返りや表現に活用して活動への意欲を高める事」については次のような具体で考えることができます。

一つは ICT の活用によって、「学習対象への興味や関心の喚起や、記録した情報をもとにした伝え合いの充実を図る」ということです。もう一つは、「活動後に自らの取り組みを客観的に振り返り、活動の良さに気付く」ということです。このような ICT の活用によって、生活科の指導が充実するイメージを、生活科の学習過程に照らして示します。

生活科の学習過程に応じた活用例

生活科においては、この四つの学習過程を基本にして、単元に相応しい展開を作ることを大切にしています。それでは、四つの学習過程に沿って ICT の活用例をご紹介します。

活用例① 思いや願いをもつ場面

「タブレット型端末に表示された公園のサムネイル画像の中から、興味や関心を持った写真を選び、画像を手がかりにそれがどこの公園かを考える」という学習活動が考えられます。教師が示す画像に、遊具や看板といった公園の特徴とともに、そこを利用している人も映るようにしておくことで、公共施設としての公園の働きに関心を向け、より具体的なイメージを伴って探検活動への思いや願いを持つことが可能となります。

活用例② 活動する・体験する場面

「地域の店で働く人々や利用する人々へのインタビューの際に、個々がタブレット型端末で撮影しておく」という学習活動が考えられます。記録・蓄積されたデジタル情報はその後、伝えたい事柄に応じて取捨選択され、伝え合いの際に活かされることことになるでしょう。こうした一人一人の発見が具体的なイメージを伴って共有されることで、新たな探検への意欲を高めることが期待されます。

活用例③ 感じる・考える場面

園児を招待して作ったおもちゃで一緒に楽しむ活動を行う際、教師が各グループの活動の様子を動画で撮影しておきます。この動画を、活動後の振り返りの際に、繰り返し確認することで活動に没頭しているときには実感しにくい活動の良さに気づくことができるでしょう。

活用例④ 表現する・行為する場面

1年間の学校生活などを振り返り、その中でお世話になった人たちにお礼の気持ちを伝える際、そこには様々な表現方法があります。例えば、その中に「ビデオレター」という方法があります。この方法には、相手に自分の気持ちが伝わるように、表情や話し方などを何度も確かめたり、修正したりしながら表現を工夫することができるという利点があります。また、通信環境等が整っていれば、オンラインによる交流について空間を超えて伝え合う表現活動も考えられるでしょう。

以上のように、生活科においては 「ICT の特質を踏まえ、児童の発達の段階や特性及び生活科の特質などに応じて適切に活用するようにすること」これで、それまで以上に体験や表現活動の幅を広げ、学習を充実させていくことが期待されます。

総合的な学習の時間におけるICT活用

小学校を例に説明しますが、中学校における総合的な学習の時間・高等学校における総合的な探究の時間においても、同様の趣旨で考えることができます。総合的な学習の時間では指導で ICT を活用するにあたっては、学習指導要領を踏まえる必要があります。

つまり、ICT の活用にあたっては「適切かつ効果的に活用し、情報を収集・整理・発信するなどの学習活動を行う」ことが求められています。具体的には「探究的な学習の過程において、その特質や期待される効果を十分に検討して学習活動を行い」、その中で基本的な操作の習得や、主体的な選択・活用が期待されていると考えられます。

総合的な学習の時間においては、これまでも、実社会・実生活上の課題の解決に向けて行われる、情報の収集・整理・発信の場面で ICT が取り入れられ、学校内外の多様な学びが展開されるなど、活用の工夫が図られてきました。ですが、 ICT 機器を活用するメリットが探究活動に十分生かされているか、という点ではどうでしょうか。多くの学校では、校内でインターネットが使える場所、つまり情報にアクセスできる場所が限られており、いつでも使いたいときに使える環境になっていないのかもしれません。さらに、1台の端末を複数名で共有しなければならないことから、場所だけではなく、時間にも制約があるかもしれません。こうしたことから「 Web 上の情報を単に学習シートに書き写す、あるいはプリントアウトする」のように、デジタルデータの利点を生かしきれず、結果、学びの深まりが生まれにくい状況もあるのではないでしょうか。

ここからは、 ICT 環境に関する現状が、子供達の探求に堪えきれていないという状況が見えてきます。もしも、 ICT の強みを活かした学びが実現したならば、探究活動はこれまで以上に充実していくに違いありません。

ここから先は、児童生徒一人ひとりが、さらに ICT を活用していくことで生まれる「時間と空間を越えた学び」「個と集団の学びの深まり」「探求の高度化」これらが実現していくイメージを共有できるよう、ご説明していきたいと思います。

時間と空間を超えた学び

総合的な学習の時間では、実社会・実生活上の課題の解決に向けて、問題解決的な活動が発展的に繰り返される探究的な学習が行われます。そこでは、学校内外の多様な学びが展開され、両者は相互に作用していくことで探究的な学習の質が高まっていきます。例えば、一人一人が情報端末やオンラインを活用することで、次のような学びが期待できると考えられます。

専門家等との接続

必要に応じて、国内外の人材とつながり、一人一人が専門家との情報収集や交流を行うことが考えられます。

社会教育施設との接続

公立図書館の中には、オンラインを活用した電子書籍サービスを整備しているところがあります。こうしたサービスを利用して、専門的な情報を確実に収集することが考えられます。

地域との接続

調査フィールドにおいては、 ICT を活用してたような情報収集を行うことが可能です。具体的には、動画や音声・静止画としての映像等の記録、 GPS とマップを関連させた位置情報に関する記録、その他数値化されるものなど、多様で多量な情報が考えられます。こうした情報は、即座にオンラインでアップロードして蓄積したり、離れた場所にいる仲間との確認や交流に行かされることも考えられます。

家庭との接続

課題を家庭で調査する、収集した情報を端末で分析し自らの考えをまとめていく、学校と家庭、子ども同士がオンラインで結びつくなどの学びが考えられます。

このように、一人一人が情報端末やオンラインを活用することで、総合的な学習の時間における学びは、時間と空間を越えて大きく広がっていくことが期待できるのです。

個と集団の学びの深まり

総合的な学習の時間では、課題の解決に向けて、主体的に行われる「個の学び」と、協働的に行われる「集団の学び」この二つを重視しています。一人一人が端末やオンラインを活用することで、個と集団の学びの一層の深まりを実現していくことが可能となります。

地域の河川の環境問題を探求する学習活動の例

学習の流れとして、

① 地域の川の探検を通して感じた「現実の川の様子」に問題を感じる。

② そこから、「身近な川の自然環境に何が起こっているのか」という共通の課題を設定する。

③ 課題の解決に向け、グループごとに「透明度調査」「生息する生物調査」「昔の川に関する取材」などの視点で情報収集を行う。

④ 調査結果を整理・分析する。

⑤ 企画した中間報告会に向け、整理・分析した情報をまとめ、表現する。

ということをイメージします。このような学習過程では「個の探求を支える」「集団の探求を支える」といった ICT の機能を実感することができます。

個の探求を支える機能

課題の解決に向け 、ICT は多様な情報収集にこたえる有効な手段となります。例えば、透明度調査や生物調査では GPS MAP 上に示される位置情報と、観察・計測した画像や数値データをその場で記録したりアップロードしたりする。また、取材活動では、インタビュー内容を繰り返し再現可能なデジタルデータで保存することで、その後の確認や編集作業に活かしていく。このような学習活動を経て、独自性・多様性・関連性のある知識が習得されていくことが期待されます。

集団の探求を支える機能

ICT を活用して収集した川の情報は、クラウドや校内サーバ等に集積することで、グループを超えて共有できるようになります。そこでは例えば、川の透明度を生息生物と関連付けながら分析したり、調査地点の様子を取材で得られた10年前の写真や話と対応させて捉えたりしていく。このように「身近な川の自然環境に何が起こっているのか」という共通の課題の解決に向け、協働的な学習の中で共有されたデータを生かして、情報の構造化や再構成が盛んに行われていくことが期待できます。

個の学びの深まり

個々の探究的な学習が連続しより深い学びになることが、また自らの学びが持続的で自覚的になり、一人一人の知識の習得や活用が促進されることが期待できます。

集団の学びの深まり

個々のデータを、異なる視点で整理して分析したりして、集団としての新たな知が生まれ協同的な学びとなることが期待できます。 

個と集団の学びの深まり まとめ

これらの学びが探究的な学習の中で往還し、相互に影響し合って高まっていくとともに、多様な考え方の中で新たな知を生成できることを体験することを通して、協働的に問題解決をする事の良さを実感していくのです。

ICT の活用が探求の四つのプロセスの充実にも寄与する例

 

総合的な学習の時間では、探求のプロセスが発展的に繰り返されていきますが、この過程において、 ICT を適切かつ効果的に活用することで、探究的な学習の高度化が期待できます。

① 課題の設定

ネットの動画などから国内外の課題を設定、デジタルカメラ等で記録した地域の画像や動画の比較から課題を設定することなどが考えられます。その際、人や社会、自然に直接関わる活動も充実させて子どもの興味・関心を喚起し、リアルな体験とバーチャルな活動を融合しながら、学習を構成していくことが重要です。これらは、「STEAM」「SDGs」「地域活性化」などのグローバルで現代的な課題の設定の際にも効果的だと考えられます。

② 情報の収集

インターネット検索、電子メールによる質問、Web 通信アプリを利用した取材など、これらを通して収集していくことが考えられます。その際、収集した多様な情報をコンピュータのフォルダに適切に整理・保存して、蓄積した情報の取り出しや共有が必要に応じて簡便に行えるように配慮することが大切です。こうすることで、多様な情報・多量な情報・最新の情報・加工しやすい情報、これらをいつでも、どこでも素早く、手軽に調査し収集することが可能となるでしょう。

③ 整理・分析

蓄積したデータの中から必要なものを取捨選択して取り出し、表計算ソフトを用いて表やグラフに表すことや、シンキングツールを使って分析することが考えられます。その際、情報を「比較」「分類」「序列化」「関連付け」するなどして、プログラミング的思考の育成を意識することも大切です。こうすることで、デジタルデータの強みを生かし、検索・分析などして情報を再構成することが可能となるでしょう。

④ まとめ・表現

プレゼンテーションやビデオレター、ウェブサイトによる発信、チャットボットを活用した案内アプリの作成など、情報を再構成し、自分自身の考えを幅広く伝え、その効果を検証して、課題を更新させていくことなどが考えられます。その際、目的に応じて加工を繰り返したり、学習の成果物を継続的に集積したりしていくことが大切です。こうすることで、校内のみならず国内外への多様な発信、手軽な製作と加工の繰り返し、成果物の継続的な集積が可能となるでしょう。

なお、総合的な学習の時間における情報手段の基本的な操作の習得にあたっては、探究的な学習の過程における実際の情報の収集、整理・発信などの場面を通して、習得していくことが望ましいとされていることに留意する必要があります。

感染症拡大防止に伴う臨時休業中の総合的な学習の時間の取り組みとして ICT活用例

新型コロナウイルス感染症について関心を高め、一人一人が家庭においてじっくりと情報収集をする中で、その情報を比較したり統合したりしてまとめるとともに、どのように行動すべきかを自分の考えとして明らかにすることを目指したものです。この事例では、オンラインで友達と交流しながら現在の状況をマップにしたり、数値化したり、わかりやすく表現するなど、各教科等において育成された資質・能力を活用したり、発揮したりする姿も見られました。もちろんこの事例は、一人一台の端末、遠隔授業用のデバイス、各家庭の wi-fi 環境が整備されたもとで行われたものですが、一人一台の端末とオンラインの充実に向けた環境整備が一層進んでいく今後を見据えながら、 ICT の適切かつ効果的な活用により、総合的な学習の時間が一層充実していくことが、ますます求められていると言えるでしょう。

参考

 

www.penginedu.com

www.penginedu.com